【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「だってぇ、寂しかったの。あなたは私の婚約者なのに、何かあればすぐにビクトリアの名前を出すでしょう? あの女がいるから、オスカー様は私を見てくれない。腹が立つのは当たり前よっ!」

 オスカーは何も言わず、軽蔑したように婚約者を見つめていた。

「ちょっとした出来心だったの。手紙を一通送ったくらいで逮捕とか大げさだわ。悪口なんてみんな言ってるし、もっと酷い虐めをしてる人間は沢山いるじゃない。なのになんで私だけ? おかしいわ! 私を逮捕するなら、みんな捕まえなさいよ、無能騎士!」

 キャンキャン吠えられ、アシュレイは苦笑を堪えるのに必死だった。

(これが未来の第二王子夫人か……世も末だな)
 
 宮廷侍女であれば『みんな』と一緒になって陰口を叩いても問題にならなかったかもしれない。だが、王族ともなれば話は別だ。
 
 国の頂点に立つ者として、責任ある態度と理性、道徳心が求められる。
 
 ちょっと腹が立ったから衝動的に。みんなやってるから私も許される。そんな言い訳は通用しない。

 自分の非を認めず、自制も更生もしないエリザは、明らかに第二王子夫人には相応しくない。
 
 そして、そんな女性を伴侶に選んだオスカーもまた、アシュレイから見て王子の器ではなかった。

(さて、オスカー殿下はこの事態にどう収拾をつけるおつもりかな?)