【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「証拠はあがってんだよ」

 殺風景な取調室に、地を這うようなジェイクの低い声が響き渡った。
 
 室内には簡素なテーブルと椅子が二脚。
 一脚にジェイクが浅く腰掛け、正面に座る犯人を鋭い眼光で睨み付ける。

「エリザ・バークレー。あんたは昨日、クラーク男爵邸の住み込み家庭教師ビクトリア・キャンベル氏に脅迫文を送りつけた」

 ふんとエリザがふてぶてしく顔を背ける。

「あんたの行いは立派な脅迫罪だ。だんまり決め込んで逃げられると思うなよ」

「……ふぁあ~」

 今度は、さらにふてぶてしく欠伸(あくび)をした。

 かれこれ30分近く取り調べをしているが、エリザは黙秘を続けている。

 さっきから何も語らず、偉そうな態度でぼんやり宙を見つめるだけだ。

 腕を組み壁にもたれて取り調べを見ていたアシュレイは、部屋に入ってきた部下に耳打ちされ「分かった」と応えた。

「ジェイク、交代しよう」

 そう言って彼の肩に手を置くと、ジェイクは苛立った様子で頭をガシガシと掻き「たのんます」と呟いて立ち上がった。

 今度はジェイクが壁に寄りかかり、かわりにアシュレイが椅子に座ってエリザを見すえる。

(エリザ・バークレー。そちらが沈黙するのなら、こちらにも考えがある。俺の大切なビクトリアさんに言い知れぬ恐怖を与えた罪、償ってもらうぞ)