【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「では、筆跡の方は僕が」

 そう言って、別の騎士が脅迫文の筆跡を鑑定する。

「彼は、捜査班の中でも腕利きの筆跡鑑定士です」

 アシュレイが私の元に来て説明してくれる。

「ここに居る騎士は、みんな若いが優秀な者ばかりですから安心して下さい」

 早期逮捕してみせるという言葉通り、捜査は順調に進んでいるようだった。
 
 頼もしい光景に不安が和らぎ勇気づけられる。全てアシュレイのおかげだ。

 
「ビクトリアさん。念のため伺いますが、脅迫文を送ってきた相手に心当たりはありますか」

「心当たり、ですか……」

 正直、ないと言えば嘘になる。

 高位貴族の娘というだけで、私に妬みひがみの感情を抱く人もいるだろう。
 
 この悪女顔とはっきり物を言う性格のせいで、怖がられたり誤解されたりしたことも過去にはある。

 だがあの脅迫文には、単なる嫉妬ではなく、強烈な悪意が込められているように思えた。

 最近、恨みを買うような話をした相手といえば……。

 ――『どんな手を使っても、君を必ず僕のものにみせる』
 
 別れ際、オスカーに告げられた言葉が蘇った。
 
 彼から向けられた執着心のこもった眼差し、脅し文句のような台詞の数々に、ぶるりと鳥肌が立つ。