それとも、学校で誰かに虐められた?
 
 
 もしくは――。

 
【オマエの幸せと大切な人間ヲ、壊してヤル】
 

 一瞬にして、全身の血の気が引いた。

 椅子に座るイアンの前にしゃがみ込み、彼の両肩を掴んで目を合せる。
 
 突然の私の行動に、イアンは目を丸くした。

「イアン様、右足どうしたんですか?」

「足? ええっと……。ビッキー、顔怖いよ。どうしたの?」

 ズボンの裾をまくって右足を確かめる。
 
 傷は見当たらないが、そっと触れると、イアンが「いたた」と顔をしかめた。

 私は急いでタオルを水で濡らし、足首を冷やしながら尋ねる。

「大事なことなので教えて下さい。この怪我、どうしたんですか?」

「大したことないよ」

「イアン様」

「……ビッキーに早く百点のテスト見せたくて、走ったんだ。そしたら足くじいた。ちょっと痛いだけなのにぃ、大げさだよ」

「突き飛ばされたりは」

「してないよ」

「知らない人に、何か変なことされたり――」

「されてない! 今日、僕が会った中で一番ヘンなのはビッキーだよ。一体、どうしちゃったのさ?」

 良かった……脅迫文の犯人に危害を加えられた訳じゃないんだ……。
 
 イアンの返事を聞いた私は、心底ほっとした。