【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 考えを巡らせていた時、ノックもなしに扉が勢いよく開いて驚いた。
 
 顔を上げると、不機嫌そうな父と目が合う。後ろには、これまた険しい顔をした母がいた。

 
「何てことをしてくれたんだ!」

 
 開口一番、父がそう叫んだ。

 あまりの騒がしさに、私は耳を塞ぎながら「冷静にお話しましょう、お父様」となだめる。

「冷静にだと……? 冷静になどなれるものかッ! お前のせいで『フェネリー侯爵家の長女は、虐めをするような下品な令嬢』、『性格が悪すぎて王子に婚約破棄された』などという不名誉な陰口を叩かれているんだぞ!」

「我が家の一生の恥ですわ。次の婦人会で、わたくし馬鹿にされてしまいます」

 世間体ばかり気にして怒鳴る父と、自分のプライドを守ることしか頭にない母。
 
 婚約破棄された上に心労と過労で倒れた娘の前で、よくもまぁ好き勝手言えるものだ。

 
 心がすぅーっと冷めていく感覚がした。