【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 そういえば、パーティドレスのままだった。

「はい」と言って顔を上げると、アシュレイはこれ以上ないほど幸せそうな笑顔を浮かべていた。

 彼が立ち去ったあと、私は豪奢なパーティドレスを脱いだ。
 
 時折、先程の光景を思い出し、自分の唇に触れながら甘いキスの余韻に浸ってしまい……。
 
 腹の虫の音で、ハッと我に返った。
 
 慌てて普段着のドレスに着替えた私は、空腹に急かされるように部屋を後にしたのだった。
 


 着替えて一階に下りると、食欲をそそる良い匂いが漂ってきた。
 
 ダイニングテーブルには、ワインとチーズ、サラダやパンが並べられている。

 手伝おうとしたが「先にサラダを食べて待っていて下さい」と言われ、キッチンを追い出されてしまった。言いつけどおりサラダを食べながら大人しく待つ。

 ほどなくして、アシュレイが料理の乗ったプレートを持ってダイニングに現れる。

 目の前に置かれたのは、ビーフシチューとオムレツ……を作ろうとして失敗したスクランブルエッグ? のようなもの。上手く包めなくて、ぐちゃぐちゃっとかき混ぜた感じだ。