【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「夢みたいだ」

「ええ、本当に。私も夢を見ているみたい」
 
 親にも愛されなかった自分が、まさか好きな人と愛し合える日が来るなんて、思いもしなかった。
 
 私と似た境遇の彼は、言葉に込められた想いを感じ取ったのだろう。

 互いの孤独を埋めるように、抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。

 再び頬に手を添えられ、キスに応じようと目を閉じた、その時――。

 
 ぐうぅ~と、お腹が鳴った。
 ――誰の? もちろん私の。
 
 なっ、な、な、なんでこのタイミング~~ッ!!!

 必死に抑えようとお腹に力を込めるが、むしろ逆効果。
 さらに騒がしく「グーグッグゥー」と腹の虫が大合唱を始める。
 
 恥ずかしくなった私は「ううっ……」と情けなくうつむいた。
 
 一方、ロマンチックなムードをぶち壊されたアシュレイはというと。

 笑うことも馬鹿にすることも無く「空腹を感じられるほど元気になって良かった」とほっとした様子で告げ、立ち上がった。

 ほんと、よく出来た恋人を持って、私は幸せ者だわ……。

「食事、俺が用意しておきますから、着替えてダイニングに来て下さい」