【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 いつの間に!? と驚く私の手を、両手で大切そうに包み込む。

「俺、すごく嬉しいです」

 やんわり肩を引き寄せられ、抱きしめられた。
 ふわりとコロンの良い香りが鼻をかすめる。

 唇がそっと重ねられた。

 驚いて体を強ばらせる私をなだめるように、触れ合うだけの優しいキスのあと、甘い余韻を残して柔らかな唇が離れていく。

 閉じていた目を開けると、アシュレイは見たことないほど色っぽく微笑んでいた。
 その男っぽい表情にときめき、胸が熱くなる。

 アシュレイの長い指が私の唇をなぞる。

 もう一度、キスしていい? と窺うように見つめられ、頷くかわりに私は再び目蓋を閉じた。

 額に、頬に、唇に。
 『愛してる』と切実に囁くような、甘く優しいキスの雨が降り注ぐ。

 前世でキスシーンを演じたこともあるけれど……。
 アシュレイの口づけは、そんなまがい物とは比べものにならないほど、情熱的で愛情のこもったものだった。

 これが、愛し愛されるって感覚なんだ。