【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 ええっと……?
 私の目の前に居るのは、本当にアシュレイ様なのよね?
 
 いつも穏やかで柔和な彼には似つかわしくない粗雑な言葉に、目をパチパチと瞬かせる私。
 
「あの……アシュレイ様?」

「すみません。非常に腹立たしくて。一国の王子にあるまじきクズっぷりに、つい口が滑りました」

 アシュレイは気恥ずかしそうにコホンとひとつ咳払い。
 
 私は呆気にとられたあと「ふふっと」笑みをこぼした。
 
 そりゃあ、アシュレイだって人間だもの。時には乱暴な口調で怒りを露わにすることもあるだろう。

 だが優雅な澄まし顔でサラッと「クズ」なんて言うものだから、顔と言葉のギャップが激しくて笑ってしまう。

「俺、なにか変なこと言いました?」

「いっ、っいいえ……。いつものアシュレイ様と違い過ぎて」

「俺、もとはグレかかった平民騎士ですよ。これでも必死にお貴族風になろうと努力しているんです。あ、イアンが真似するといけないので、俺の口の悪さは内緒ですよ」

 私は笑ったまま頷いた。