【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「ビクトリアさん。具合はどうです? 医者を呼びましょうか?」

「少し休んだら元気になりました。お気遣いありがとうございます」

 いつもなら、アシュレイと一緒にイアンも『ビッキー、大丈夫?』と様子を見に来るはずだが、姿が見当たらない。

 ワンパク怪獣の足音もしない。少し早い時間だけど、眠ったのかしら。

 アシュレイに尋ねてみると「イアンはかなり疲れたみたいで、早めに夕食を取り眠ってしまいました」とのことだった。

「良かった。もしかしたら、パーティの余韻で寝付けないかなって、心配してたんです」

「さすがに、興奮より疲れが勝ったみたいですね。イアンのことは置いといて。ビクトリアさん、食事は? お腹空いだでしょう? スープを持ってきましょうか? ガッツリ食べられるなら、夕食温め直しますよ」

 心配そうに私の様子を伺うアシュレイ。優しく気遣ってくれる姿に、胸の内がじんわり温かくなった。

 ……ああ、やっぱり。私、この人が好きなんだなぁ。

 しみじみと、そう実感する。
 
 気付いてしまったからには、この恋心と胸の痛みを隠しきれない。

 恋愛感情は持ち込まないという暗黙のルールのもとで始まった、この仕事と生活。

 だけど、ここまで想いが育ってしまった以上、誤魔化して続けるのは不可能だ。

 
 もう、潮時ね――。