【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「イアンのやつ、どうしていつもビクトリアさんの膝で寝るんだ。足、痺れるでしょう? 俺がかわりますよ」

「これくらい平気ですよ」

 起きているときも可愛いけれど、寝ているイアンも愛らしい。
 天使のような寝顔に、ささくれだっていた心がほのぼの癒される。

 優しく頭を撫でると「ママ……」とイアンが寝言をいった。

「きっと、お母様の夢を見ているんですね」

「そうみたいですね」

「あの……イアン様のお母様って、どんな方だったのですか?」

 アシュレイはイアンを見つめながら懐かしむように語った。

「イアンの母親、ジェナは明るくて前向きな女性でした。夫のフレッドを亡くしたあとも弱音ひとつ吐かず、イアンを育てていましたから」

「とても気丈な方だったんですね」

「そうですね。イアンの両親と俺は同郷で幼い頃から一緒でしたが、三人の中でもジェナが一番強かったかな」

 話しているうちに馬車はクラーク邸に到着した。ガタンという揺れで目を覚ましたようで、イアンが眠い目を擦って起き上がった。

 寝ぼけ眼で私の顔をまじまじ見つめる。