【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 舞踏ホールから続々と人が出てくる。どうやらパーティが終了したらしい。

 人波をかき分け会場に戻ると、すぐさまアシュレイとイアンが駆け寄ってきた。

「良かった。探しても見つからないから心配しましたよ」

「ごめんなさい。会場の外へ出たら迷ってしまって」

「僕も心配したよ。ビッキー、おうち帰ろ?」

「ええ、帰りましょう」

 人混みではぐれないよう、三人で手を繋いで出口へ向かう。
 馬車に乗り込むとイアンが興奮気味に今日の出来事を語り出した。

 私とアシュレイは、ほほ笑ましくそれを見守る。

「でね! キャシーに『ダンスとっても上手だね』って言われたんだ! へへっ、ビッキーのおかげだよ」

「私じゃなくて、イアン様の努力のたまものですよ」

「違うよ」とイアンが首を横に振る。

「ダンスだけじゃなくて、僕が勇気を出せたのは、二人がいてくれたからなんだ。あの子にも言い返せてスッキリしたよ! ぜんぶ、ビッキーとアシュレイ様のおかげ!」

「幸せ家族作戦。大成功ですね」

「へへっ、だいせいこーう!」

「こら、馬車の中であばれるんじゃない。揺れるだろう」

 
 アシュレイにたしなめられ、イアンが「はぁ~い」と大人しく席についた。
 
 しばらく興奮冷めやらぬ様子でソワソワしていたが、段々眠くなってきたようだ。コクリコクリと船をこぎ始めかと思うと、パタンと横になって寝てしまった。

 私の膝の上に頭を乗せて、すやすや気持ちよさそうに寝息を立てている。