【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「君は、血の繋がった肉親を見捨てられるのかい?」

 オスカーの一言に、私は押し黙った。

 その台詞は、あまりにも卑怯だ。

 私の責任感の強さと家族を想う人情につけ込み、無理やり復縁を迫るような卑劣なやり方に憤りを隠せない。

 オスカーは、とことん性根の腐った人間だ。

 ……こんな人の元に再び戻るなんて、考えただけでも虫酸が走る。

「私の決心は変りません。フェネリー侯爵家とは縁を切りました。そしてオスカー殿下、あなた様とも。エリザ様とどうかお幸せに。では人を待たせているので、これで失礼致します」

「待ちたまえ――!」

 出口へ向かう私の手をオスカーが掴む。

「手を離して下さい」

「そんなに、あの男が好きなのか」

「あの男?」

「アシュレイ・クラークのことだよ」

 家族の次は、アシュレイのことを持ち出してくるなんて。なりふり構わないオスカーの態度に呆れと苛立ちが募る。

 答えない私を見て、無言の肯定と捉えたのだろう。オスカーは眉間に盛大なしわを(きざ)んだ。

「なんだよ、図星か? クールな君がそんな顔をするなんて、よほどあの男が好きなんだな。そうだ、君に良いことを教えてあげよう」

「いえ、結構です」

「そうつれないことを言うな。僕は君のために忠告してあげるんだ。君とアシュレイは、決して結ばれることはないよ。なぜならあの男には、忘れられない思い人がいるからね」

「思い人……?」