【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 オスカーの言っていることが理解出来ず、私は唖然とした。すぐさまハッとして周囲を見渡す。こんな場面、エリザに見られていたら大変だ。

 私にその気がなくても、オスカー殿下と浮気した! などと一方的に恨まれたら(たま)ったものではない。
 
「エリザは居ないよ。帰ったからね」

 オスカーがふふっとほほ笑む。

 婚約者の居ない隙を狙って別の女性を口説くとは、この王子の好色も相変わらずだ。
 
「『帰っておいで』とは一体……。仰っていることの意味が、私には理解しかねます」

「言葉の通りさ。僕の妻になって欲しい」

 ……はぁ?
 
「謹んでお断りします」

「なぜだい?」

 私の即答に、オスカーが不愉快極まりないといった様子で眉をひそめる。

 ……なぜって……それは私の台詞よ!
 
 そっちから婚約破棄したくせに、よりを戻そうですって?
 全くふざけた話だわ!

「私はすでに新しい人生を歩んでおります。オスカー殿下の元へ戻るつもりは毛頭ありません。私になど構わず、どうか婚約者のエリザ様を大切にしてあげて下さいませ」

「エリザ? はぁ……。あれは駄目だ。我が儘すぎて、僕の伴侶にはふさわしくない。今日だって何に腹を立てたのか知らないが、怒って先に帰ってしまった。まったく、なんて女だ」

「私ではなく、彼女を結婚相手に選んだのは殿下です。いまさら私に彼女の愚痴を言われても困ります」