【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「あんたが、悪いのよ」と、彼女が呟く。

 
「ハルトくんは、みんなのアイドルなの! あんたみたいな意地悪女が、あたしたちのハルトくんを穢すな! この最低女! 悪女!」
 
 ハルト……くん?
 
 あぁ……そういえば、そんな名前の男性アイドルと共演したこと、あったな。

 たしか、ゴシップ誌が熱愛報道をでっち上げたんだっけ。

 マネージャーが、売名のためにあえて否定しない方針を取ったと言ってた気がする。

 サイレンの音が聞こえる。
 誰かが通報してくれたんだ。
 
 私を突き落とした女の子は、駆けつけた警察に取り押さえられながらも、まだ『悪女』だの『あたしがハルト君を守るんだ!』などと叫んでいる。

 
 担架の上で、私は目を閉じた。
 全身が痛い。力が抜けていく。


 死ぬんだ……と悟ったとき、悔しさが込み上げてきた。


 冗談じゃないわよ。
 
 アイドルと熱愛だって?
 
 こっちとら、仕事三昧で恋なんてしたことないわよ。

 悪女だのなんだの、勝手な憶測とイメージで悪者扱いされて、こんな風に死ぬなんて……。

 
 あぁ、こんな人生、いやだなぁ――。

 もう一回、やり直したい。
 
 そうしたら今度こそ、ママのためでもマネージャーのためでもない。

 自分自身の幸せのために、生きるのに。


 そこまで考えて、私の意識は、命は、ぷっつり途切れた。