【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 腕組みして眉間にしわを寄せるオスカーと、不機嫌な顔を隠しもしないエリザ。

 大衆の注目の的になっているだけでなく、一段高い席からオスカーとエリザにじっと睨み付けられた私は、思わず緊張してしまう。

 体がこわばり、わずかにステップが乱れた。ぐらりと傾いた体を力強い腕で支えられる。

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。周りを見ずに俺だけを見て。ここが、優勝賞金のかかったDー1グランプリの会場だと思えば、実力を発揮できるんじゃない?」

「ふふっ、懐かしい。覚えていてくれたんですね。おかげで緊張がほぐれたわ」

「それは良かった」

 腰を引き寄せられ体がぐっと近づき、自然と視線が絡み合う。私は肩の力を抜いてアシュレイのリードに身を任せた。

 次第に周りの気配が消えて、意識がすべて彼に注がれる。

 世界に二人っきり、取り残されたような錯覚を抱く。

 このパーティが幕を下ろしたら、演技は終わり。
 私たちは恋人同士という設定から、雇い主と家庭教師という関係に戻る。

 あぁ、永遠に、このダンスが続けば良いのに。残念だな。


 ……ん? 残念だな、だって?

 
 私はふと浮かんだ言葉に、内心首をかしげた。
 そうこうしているうちに曲が終わり、アシュレイに手を引かれて壁際に移動する。
 
 次は子ども達の番だ。小さな紳士淑女たちが緊張の面もちでホールに歩み出る。