【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「君は何も悪くないのだから、うつむく必要はないよ。たとえ正体が明かされたとしても、責められる()われはない。堂々としていればいい」

「アシュレイ様……」

 力強い言葉と頼もしいアシュレイの存在に勇気が湧いてくる。

 そうだ。私が悪い訳じゃない、こそこそする必要なんてないんだ。

 胸の内に絡みついていた不安や怯えが綺麗に消え去り、心がすっと軽くなった。

「ありがとうございます」と囁くと、彼が「どういたしまして」と微笑む。

 アシュレイは寂しい時や不安な時、さりげなく一番欲しい言葉をかけてくれる。この人がいれば何があっても大丈夫だという、絶対的な安心感を抱くのだ。

 この人の隣にいると、ほっとする……不思議だわ。
 
 気がつけば長いスピーチは終わり、ホールの中央でオスカーとエリザがオープニングダンスを踊っていた。

 オスカーが別の女性と見つめ合いダンスを踊っていても、何の感情も湧かない。

 いま私の頭の中を占めるのは、隣にいるアシュレイのことばかり。

 オスカーとエリザのダンスが終わり、司会者のアナウンスが入った。

「お次は保護者の皆様、子ども達にお手本のダンスをお願い致します。ホール中央へお集まり下さい」

 男女が連れ立ってホールに集まり始める。

「ビクトリアさん、踊って頂けますか?」

「ええ、もちろん」

 差し出された手を取り、二人で煌びやかなホールへ躍り出る。
 
 流れてきた優雅なワルツの調べに乗って、私たちは踊り始めた。

 視界の端に、こちらを見つめる人々の姿が映る。
 その中に、見知った二人がいた。