【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 意地悪な声の主は、イアンと同じ年くらいの少年だった。

 ブランド物の服、子どもが着けるには高価すぎる時計。身なりからして裕福な家の子だと分かる。

 少年は、意地の悪い笑みを浮かべながらもう一度言った。

「だから、ここは、お前みたいな庶民が来る学校じゃないって言っているだろ! 親のいない可哀想な子どもは、さっさと帰りな」

 心をえぐる言葉に、イアンがぐっと押し黙る。
 隣にいたキャシーが庇うように前に出た。

「アンタ、この前からどうしてイアンに意地悪なこと言うわけ? 性格、ひん曲がってんじゃないの、この最低男」

 可憐な見た目によらず、なんて強気な女の子なのかしら。私は心の中でキャシーに拍手を送った。

 一方、最低男と呼ばれた少年は、一瞬かなしそうな顔をしたものの、すぐに立ち直って叫び散らした。

「ハッ、相変わらず女のくせに口が悪いな。なんだよ、お前だって、おてんば最低女のくせに。バーカ、ブース、ブス!」

 ブスと言われた瞬間、キャシーが傷ついた顔で閉口した。下唇を噛みしめ必死に泣くのを堪えている。
 
 大きな目から涙がこぼれ落ちた時、隣からハンカチがすっと差し出された。――イアンだ。

「キャシー、これ使って」

「ありがとう……」

「こちらこそ。僕のために怒ってくれてありがとう。君はとっても素敵な女の子だよ」