【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 アプリを見ながら最寄り駅を探す。

 途中、すれ違った女の子と肩がぶつかってしまい、私は「ごめんなさい」と謝った。

 相手がこちらを見て、驚いた様子で目を見開く。
 
 まずい、バレたかも。

 嫌な予感がして、小走りにその場から駆け出した。



 人混みを抜けて階段を駆け上がり、歩道橋の上まで来たところで、私は荒い息を整えた。

 後ろをちらりと確認する。
 追いかけてきていない。

 よし、大丈夫。

 顔を上げると、空が夕焼けのオレンジ色に染まっていた。

 ここ数年ずっと時間に追われていて、こんな風に空を見るのは何年ぶりだろう。

 しんみりした気分に浸りながら歩道橋をあるく。

 下り階段にさしかかった瞬間、ドンッと強く背中を押された。

 
 ふわりと体が宙に浮く。

 次いで、全身に激しい衝撃が走った。
 歩道橋の階段を勢いよく転げ落ちていく。


「ぅ……」

 
 気が付けば、私はコンクリートの硬い地面の上で仰向けに横たわっていた。

 薄く目を開くと、こちらを睨み付ける少女と視線が交わる。

 彼女は、さっき私がぶつかった女の子だった。