【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 お客を喜ばせるためのリップサービスだと分かっていても、素敵な家族と言われて嬉しかったから、わざわざ否定するのも野暮な気がしたのだ。

 さて、男性たちにすべて任せていたら埒があかないわ。

 私はドレスの山の中から、何とか二人の意見を最大限反映させたドレスを選び試着してみた。
 
 背中や胸元はシースルーになっており、女性的な色気もかもし出しつつ、露出は程よく抑えられている。生地も落ち着いたモスグリーンで、懇親パーティにはぴったり。

 シャッと試着室のカーテンを開け、二人の目の前に立った私は、その場でくるりと回った。

「どうでしょうか?」

 アシュレイとイアンが揃って、惚けたように私を見つめる。じーっと熱烈な眼差しを受けて、穴が開きそうだ。

 あの……と口を開きかけた所で、我に返った男性二人は満面の笑みを浮かべた。

「……とても、綺麗だ。すごく似合っています!」

「うんうん! これで作戦成功まちがいなしだよ!!」
 
 しみじみと「綺麗だ」と呟くアシュレイの横で、イアンが興奮した様子でぴょんぴょん飛び跳ねる。

 ようやくドレスが決まり、私はほっと胸をなで下ろした。
 諸々を買い込みブティックを出る頃には、すっかり夜になっていた。

「戦闘服は手に入れた。決戦のときが近付いている。アシュレイ父上、ビッキー母上、パーティは戦場だ! 心してかかるのだ!!」

 作戦隊長イアンの号令に、私とアシュレイは一瞬目を合わせ、ほほ笑むと――そろって「イエッサー!」と敬礼した。
 
 次の瞬間、帰りの馬車の中に朗らかな三人の笑い声がこだまする。

 
 だが、この時の私はまだ知らなかった。
 まさか学校の懇親パーティであの男と再会することになるなんて、考えもしなかったのだ――。