【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 商業街へ向かう馬車の中で、私は「ありがたいお申し出ですけど、さすがに申し訳ないですよ」と恐縮する。

 いつもなら何事に対しても物分かりのよいアシュレイだが、今日は頑固だった。

「そもそもドレス類が必要になったのは、懇親パーティに出るためですし。なにより、俺があなたにプレゼントしたいんです」

 ひたむきな表情で「お願いします」と言われ、私は瞬時に考えた。
 
 ここで『いやいや、買って貰うなんて悪いですよ!』と変に意地を張って断り続けるのも、可愛げが無いと思う。素直にお言葉に甘えよう。頂いた分は、いつか頃合いを見て何かお返ししましょう。

 私は、ありがとうございますと感謝を述べて頷いた。

 色よい返事に気を良くしたのか、アシュレイはにっこり笑い、この街で一番人気の高級ブティックに私をエスコートした。

「ビッキーのドレスは僕が選ぶ!」と言ってついてきたイアンが、店の中をぐるりと見渡して「うわぁ」と感嘆の声をあげた。
 
 広々とした店内にはずらりとドレスや装飾品が並び、頭上のシャンデリアの明かりを受けてキラキラと輝いている。
 
「学校の懇親パーティ用なので、落ち着いた上品な物をお願いします」とオーダーすると、店員が「これなんていかがでしょう」と次々とドレスを持ってきた。