【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「クラスの子に。『親なし、本当の家族がいない、かわいそうな子だな』って言われた」

 あまりにも心無い言葉に怒りがわき上がった。

『クラスの子』というからには、言ったのはイアンと同年代の子どもだろう。
 
 親が話している内容をそのまま口にしたのか、もしくは傷つけてやろうという悪意があったのか。

 発言者の明確な意図は分からないが、心を深く傷つける言葉だ。

 
「ママとパパが死んじゃって、すごく悲しかった。でも今はアシュレイとビッキーがいるし、屋敷のみんなも優しい。本物の家族じゃないけど、僕、とっても幸せなのに。ぜんぜん、かわいそうじゃないのに……」

 両目から大粒の涙を流しながら、イアンがしゃくり上げる。
 そっと肩を抱き寄せると、私の胸に顔を埋めて泣き始めた。

 帰ってくるまで、ずっと我慢していたのだろう。小さな体を震わせて悲しみを堪える姿に、こちらまで泣きそうになってしまう。
 
 なんて言葉をかけてあげれば良いんだろう……。

 前世でも今世でも、私は両親に慰められた経験がない。泣いていても放置されるか、『うるさい』と怒られるだけだった。だから、何と言ってあげるのが正解か分からない。
 
 イアンの頭を撫でながら、私は必死にかける言葉を探す。