【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 翌朝、食事の席についた私は『よかった』と内心胸をなで下ろした。

 昨夜は疲れた顔をしていたアシュレイだが、お酒を飲んでストレス発散できたのか、今朝はいつもどおり。いや、いつも以上にご機嫌な様子。

 それとなく様子を伺っていると、ぱちりと目が合った。瞬間、アシュレイがふんわり口元に笑みを浮かべる。

 こちらに向けられる眼差しはとても優しく、どことなく……甘い気がする。

 トクンと胸が高鳴った。気恥ずかしくなった私は、うつむいてパンにバターを塗る。
 
 いやいやいや。これは別に惚れた腫れたの話じゃなくて……!
 美形にほほ笑まれたら誰だってドキッとしちゃうでしょう。
 
 仕事に私情は持ち込まない。恋だの愛だのにうつつを抜かさない。
 
 頭の中で呪文を唱えていると、ダイニングルームの扉が開き「おっはよ~う!」と元気いっぱいの少年が駆け込んできた。
 
 新品の制服をまとったイアンは、その場でくるり回ると、ふふんと胸を張る。
 
「どう、かっこいいでしょ!」