【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 こういう時、なんて声をかけて慰めれば良いのだろう。
 今日に限って良い言葉が浮かんでこないなんて。あぁ……もどかしい!

 三杯目のグラスが空になった時、心を決めた。

 グスグス悩むのは私らしくない。想いは言葉にしないと分からないわよね。アシュレイを癒したい、慰めたいという気持ちを伝えてみよう。

 私は空になったグラスをテーブルの上に置いた。
 
「お次は、わたくしのターンですわね」

「ターン? どうしたんですか急に。というか、なんだか目が据わっている気がするんですが……」

「私、アシュレイ様にはとても感謝しているんです」

 脈絡のない話題に、アシュレイが目をパチパチと瞬いた。

「戦勝記念パーティの時、階段から落ちそうになった私を助けてくれたでしょう? あの時、あの場にアシュレイ様がいなければ、私は確実に死んでいました」

「先生を助けることが出来て良かったです」

 お酒のせいか照れのせいか、アシュレイの頬がじんわり色づいている。その顔を見ていると私もなんだか照れくさくて、火照る頬を手であおぎ、四杯目を注ぎながら話し続けた。
 
「とにかく、アシュレイ様が居なければ、私はこんな風に幸せな日々を送ることは出来なかったわけで……」
 
「あの、褒めて頂けるのは嬉しいんですが、ちょっと恥ずかしいのでこの辺で……」

「まだです。言い足りません! 今日はアシュレイ様を、とことん褒めて、褒めちぎると決めてるんで。そこんとこ覚悟して下さいね。ヨ・ロ・シ・ク!」

「はは、よろしくと言われましても。ビクトリア先生、もう完全に酔っ払っているでしょう。今夜は、そろそろお開きにしますよ」

 そう言って、アシュレイがテーブルの上にある酒瓶とグラスを片付け始める。私は慌てて「あぁっ、待って下さい!」と彼を引き留めた。