【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 こういう他人に弱みを見せられないタイプの人に『大丈夫?』と聞いても、『はい、大丈夫です』と返されるに決まっている。

 う~ん、なんて声をかけてあげれば良いのかしら。名案が浮かばず、グイッと酒をあおる。気付けば三杯目に突入していた。


「先生。今日、飲むペース早くないですか?」

「そうですか? いつもと一緒ですよ」とごまかしたが、かなりのハイペースである。

 しばらく向かい合って静かにお酒を飲んでいると、ふいにアシュレイが「昼間の件ですが――」と口を開いた。
 
 
「あの二人については厳しく対処したので、二度とこの屋敷に立ち入ることはありません」

 
 騎士団での厳しい尋問によって、二人がそれぞれ犯罪行為に手を染めていた疑いが浮上した。
 
 クラーク卿は事業継続のため裏組織と通じ、金銭を稼いでいた容疑。

 夫人は、前妻の子が伯爵家を継ぐことが許せず、違法な妨害工作を行った疑惑があるという。

 まさか自分の親が騎士団で取り調べを受けることになるとは、人生なにがあるか分かりませんね……とアシュレイは自嘲気味に呟いた。
 
「犯罪に手を染めていただけでなく、イアンを連れて行こうとしたり、あなたに暴力を振るおうとするなんて。まったく、とんでもない人達ですよ」

 そうね……確かにとんでもない人だった。けれど、私が一緒になって悪口を言うのはお門違いだから、あえて口をつぐむ。