【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 ぴったり息の合ったタイミングで言葉が重なった。

 偶然の出来事に、私達は顔を見合わせ「気が合いますね」と笑い合う。けれど真夜中だったことに気が付き、お互いに『しーっ、静かに』と人差指を口元に当てた。
 
 それぞれ支度を済ませリビングに集合した私たちは、ソファに腰掛け『お疲れさま』とグラスをカチンと合せて乾杯した。

 いつもより少し強い酒を飲んで寝たいというアシュレイの要望で、今日のお酒はいつもより度数がきつい。
 
 私は『くぅっ、効くわぁ』と思いながらクイッと飲み、アシュレイはゴホゴホと咳き込む。

「こほっ、こほ。きっついですね、この酒。え、ビクトリア先生、なぜそんな涼しい顔で飲めるんですか」
 
「お酒は『そこそこ』強い方なので」

 お澄まし顔で言う私に、アシュレイが「これが、そこそこの強さですか?」と意地悪な口調で茶化してくる。

「ええ、そこそこです」

「そういうことにしておきましょう」

 アシュレイはにっこり笑うと、再びグラスに口をつけた。

 帰って来た時はひどく疲れた姿だったのに、努めて明るく振る舞っているようだ。
 
 あぁ、やっぱり。この人は私と似ている。
 悲しみや孤独をひとりで抱えこむ性格、上手に弱音を吐けない不器用さ。
 
 まるで鏡に映った自分自身を見ているみたい。