「その孤児が器量良しなら、知り合いの屋敷へ奉公に出させてあげようと思ったのよ。アシュレイだって、男手ひとりで子育ては大変でしょう? 息子を楽にしてあげたいという、これは親心よ」
自分達の野心のため、イアンを勝手に邪魔者扱いして排除しようとしているくせに、何が親心だ――!
あの二人が、どれほど互いを大切に想っているか。家族以上の信頼関係を築いているか知りもしないで、勝手なことを。
腹の底からわき上がるマグマのような怒りを勇気に変えて、私は毅然と「お通しする訳には参りません」と告げた。
クラーク卿が眉間にしわを寄せ、夫人がイライラした様子で喚き散らす。
「あなたに構っている暇はないのよ! 早くそこを退きなさい!」
「お断り致します」
「何ですって?」
クラーク卿と夫人がそろって目を吊り上げる。だが構うものか。
「もうすぐアシュレイ様がご帰宅なさいます。それまで、この部屋でお待ち下さい」
「わたくしは、そこを退けと言ったのよ。使用人の分際で口答えするなんて、全くなんて躾のなっていない女なの」
「私の雇い主はアシュレイ様です。主人以外の命令には従いません」
毅然と言い放つと、夫人が顔色を変えた。
ギリッと奥歯を噛みしめ、手にした扇を閉じて大きく振りかぶる。
ヒュンと鋭い風切り音とともに、勢いよく扇が振り下ろされた。
叩かれる――と思い、とっさに目を閉じる私。迫る衝撃と恐怖。
身をすくめた直後、直後、パシンッという乾いた音が部屋中に響き渡った――。
自分達の野心のため、イアンを勝手に邪魔者扱いして排除しようとしているくせに、何が親心だ――!
あの二人が、どれほど互いを大切に想っているか。家族以上の信頼関係を築いているか知りもしないで、勝手なことを。
腹の底からわき上がるマグマのような怒りを勇気に変えて、私は毅然と「お通しする訳には参りません」と告げた。
クラーク卿が眉間にしわを寄せ、夫人がイライラした様子で喚き散らす。
「あなたに構っている暇はないのよ! 早くそこを退きなさい!」
「お断り致します」
「何ですって?」
クラーク卿と夫人がそろって目を吊り上げる。だが構うものか。
「もうすぐアシュレイ様がご帰宅なさいます。それまで、この部屋でお待ち下さい」
「わたくしは、そこを退けと言ったのよ。使用人の分際で口答えするなんて、全くなんて躾のなっていない女なの」
「私の雇い主はアシュレイ様です。主人以外の命令には従いません」
毅然と言い放つと、夫人が顔色を変えた。
ギリッと奥歯を噛みしめ、手にした扇を閉じて大きく振りかぶる。
ヒュンと鋭い風切り音とともに、勢いよく扇が振り下ろされた。
叩かれる――と思い、とっさに目を閉じる私。迫る衝撃と恐怖。
身をすくめた直後、直後、パシンッという乾いた音が部屋中に響き渡った――。



