【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「私は旦那様に至急連絡を取る。申し訳ないが、君はご用命どおりお茶を持って行ってくれないだろうか」

「かしこまりました。お任せ下さい」

「頼んだよ。彼らは激情家だから口答えはしないように」

 一刻も早く伝令を飛ばすべく、執事は足早に去って行く。

 厨房で紅茶を受け取った私は、侍女にイアンの様子を見に行くようお願いして居間へ向かった。

 失礼しますと告げて入室すると、さっそく夫人が値踏みするような視線を向けてくる。

 お茶をテーブルに置くと「そこへ座りなさい」と夫人に命じられ、私は大人しく従った。

 じろじろ睨まれ居心地が悪いったらありゃしない。が、やられっぱなしの私じゃない。こちらも密かに二人の様子を伺った。
 
 両者とも豪奢な服と装飾品を身にまとっている。

 だが有名ブランドの新作ドレスを着ている母親に対し、父親の服はかなり昔のデザイン。革靴は所々汚れており、左腕の時計にも細かな傷が見て取れる。

 どうやら父親の方は金銭的にも精神的にも、身なりに気を配る余裕がないようだ。