【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「わたくしたちは、アシュレイの親よ! 息子の家に入るのは当然の権利でしょう、何がいけないのよ!」

 話の内容から察するに、あの紳士と夫人はどうやらアシュレイのご両親のようだ。

「もう埒があかないわ。どきなさい」

 使用人たちを押しのけ、アシュレイの両親が強引に屋敷へ入ってくる。
 止めようとした執事の手を、夫人が扇子でぴしゃりと叩き落した。

「わたくし、今は伯爵夫人ですのよ。傷つけようものなら、平民のお前ごときの首、一瞬にして文字通り跳ね飛ばしてやりますからね」

 貴族夫人に脅されては、執事も引き下がる他ない。
 ずかずかと屋敷に上がり込む二人を、戸惑いとともに眺めるしかなかった。

 ちらっと婦人が私を見て、キッと鋭い眼光で睨み付ける。
 
「あぁ、そこの娘。そうね、お茶はお前が持って来なさい。話があります。居間はこちらかしら」
 
 急に命令されドキリと心臓が跳ねる。
 惑う私にかまわず、二人はリビングへ消えていった。

 私に話とは一体何だろう……。嫌な予感しかしない。

 執事が申し訳なさそうに近付いてくる。

「巻き込んでしまって、すまないね。聞いてのとおり、彼らは旦那様のご両親だ。以前一度だけ、金の無心に来たのを旦那様が追い払って以来、何の音沙汰もなかったのだが」

 何となく、あの二人の目的が分かった。
 出世した息子に取り入ろうとやって来たのだろう。