【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 その日も二階の学習部屋でイアンの勉強を見ていると、階下から言い争うような騒がしい声が聞こえてきた。
 
 参考書に目を落としていたイアンが、不思議そうに顔をあげる。

「だれか来たのかな?」

「どうでしょう。私、ちょっと様子を見てきますから、イアン様はここに居て下さいね」

 何か嫌な予感がして席を立つ。
 
 私の強ばった表情から不穏なものを感じ取ったのか、イアンは「分かった」と大人しく言うことを聞いてくれた。

「すぐに戻ってきますね」と言って、私は部屋を出る。
 
 一階に近付くにつれ声が一層大きくなる。玄関ホールには二人のお客様が立っていた。
 
 一人は、片手に杖を持った40代くらいの貴族風紳士。
 もう一人は、豪奢なドレスに羽帽子をかぶった、こちらも40代くらいの派手なご婦人だ。

「アシュレイ様から、お二人をお通ししないよう厳命されております。どうぞお引き取り下さいませ」

 ヒステリックに叫ぶご夫人を、執事が必死に押しとどめていた。