【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 気付けば全力で即答していた私。
 あっけにとられるアシュレイ。

 室内に落ちる数秒の沈黙……。

 
「ビクトリア先生、さてはかなりお酒、好きですね?」

「ほほほ、たしなむ程度ですわ」

「この珍しい銘柄を知っているということは」

「あら、嫌ですわ。本当に、た・し・な・む・程度ですわ!」

 圧強めに言い切れば、アシュレイは堪えきれないといった様子で声を上げて笑った。
 
 こんなに満面の笑みを浮かべる彼を私は初めて見た。

「しっ、アシュレイ様、笑いすぎです! 静かにしないと、イアン様が起きちゃいますよ」

「あっ、それは困る。それでは、俺は貯蔵庫(セラー)から酒を持ってくるので、おつまみの調達をお願いします。リビング集合で」

「了解です!」

 その夜、アシュレイと一緒に飲んだお酒は人生で一番おいしかった。
 
 とろりとした高級酒は飲みやすく、鼻から抜ける芳醇な香りが最高。

 気付けば半分以上を私がさらりと飲み干してしまっていた。

 目の前では、酔って頬を染めたアシュレイが、嬉々としてお酒を飲み進める私をにこやかに眺めていた。

 グラスを傾けながら「俺よりお酒、強いじゃないですか」とくすくす無邪気に笑っている。どうやら酔うと笑い上戸になるタイプらしい。