勉強部屋に入ってきたアシュレイは、机の上に広げられた参考書をめざとく見つけると「ドアの隙間から灯りが見えたもので。仕事をしてたのですか?」と尋ねてきた。
「特にやることもないので、今日購入した教材に目を通しておこうかなと思って」
「プライベートの時間は、しっかり休まないと」
そう言って数秒考え込んだあと、唐突に「ビクトリア先生、お酒は好きですか?」と質問してきた。
「え? ええ。たしなむ程度ですけど、好きですよ」
「それは良かった。実は、同僚から良い酒をもらったんです。確か銘柄は――」
貴族でもなかなか入手できない高級銘柄に「なんですって!」と思わず声をあげてしまう私。とっさに口をつぐんで、澄まし顔でこほんと一つ咳払い。
アシュレイにはたしなむ程度と言ったが、実のところお酒は大好きだ。
二十歳の誕生パーティで飲み、その美味しさの虜になって以来、たまに自分へのご褒美でお酒を買うことがあった。
でもきっと男性の前では『お酒なんて、わたくし飲めませんわ~』と可愛い子ぶるのが令嬢としては正解よね?
酒豪の令嬢なんて可愛くないだろうし……。
あれこれ悩んでいると、アシュレイが「お酒の気分じゃないですか?」と控えめに尋ねてきた。
まずい。この雰囲気だと『やっぱり酒盛りの話はなしで』ということになりかねない。
めったにお目にかかれない高級酒を前に、私はかぶろうとした猫を一瞬で投げ捨てていた。
「いえいえ! すっごく飲みたい気分です! 高級銘柄、とっても気になりますわ!!」
「特にやることもないので、今日購入した教材に目を通しておこうかなと思って」
「プライベートの時間は、しっかり休まないと」
そう言って数秒考え込んだあと、唐突に「ビクトリア先生、お酒は好きですか?」と質問してきた。
「え? ええ。たしなむ程度ですけど、好きですよ」
「それは良かった。実は、同僚から良い酒をもらったんです。確か銘柄は――」
貴族でもなかなか入手できない高級銘柄に「なんですって!」と思わず声をあげてしまう私。とっさに口をつぐんで、澄まし顔でこほんと一つ咳払い。
アシュレイにはたしなむ程度と言ったが、実のところお酒は大好きだ。
二十歳の誕生パーティで飲み、その美味しさの虜になって以来、たまに自分へのご褒美でお酒を買うことがあった。
でもきっと男性の前では『お酒なんて、わたくし飲めませんわ~』と可愛い子ぶるのが令嬢としては正解よね?
酒豪の令嬢なんて可愛くないだろうし……。
あれこれ悩んでいると、アシュレイが「お酒の気分じゃないですか?」と控えめに尋ねてきた。
まずい。この雰囲気だと『やっぱり酒盛りの話はなしで』ということになりかねない。
めったにお目にかかれない高級酒を前に、私はかぶろうとした猫を一瞬で投げ捨てていた。
「いえいえ! すっごく飲みたい気分です! 高級銘柄、とっても気になりますわ!!」



