【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

「俺、先生にはとても感謝しているんです」

「――私ですか?」
 
 唐突に感謝されて驚いた。

 ひっくり返った声をあげる私に、アシュレイが柔らかくほほ笑む。

「身だしなみに行儀作法。今日の買い物も、俺では気付けなかった事ばかりです。それに先生が来てから、イアンが毎日笑顔なんです。ありがとう、ビクトリア先生」

「いえ、私じゃないですよ。イアン様が笑顔なのは、アシュレイ様という素敵な家族がいるからです」

「素敵な、家族か……」

 アシュレイが嬉しそうに微笑んだ。

「正直、自分自身、家族というものがイマイチ分からなくて。イアンにどう接して良いものか、愛情が伝わっているか不安でした。だから、そう言ってもらえて、ホッとしました」

「お二人は、羨ましいくらい素敵な家族ですよ」

 こちらに戻ってきたイアンに「初めて会ったとき、アシュレイ様のことが好きって、教えてくれましたよね?」と問いかけてみる。
 
 すると、イアンは吸い込まれそうなほど綺麗な目でアシュレイを見つめ……ぱぁっとまばゆい笑顔を向けた。