あの夜。

私は怖くて、『帰りたい』と呟いた。



……あぁ、そうだ。

璃花子ちゃんが言ったんだ。

『大丈夫だよっ!』って。



『もう、響ちゃんは怖がりなんだから』



……そう。

確かに言った。

私の名前。




「私が響ちゃんの名前を【鬼の子】に教えてしまったから。……だから、響ちゃんがターゲットになった」
と、璃花子ちゃん。



「ごめんなさい……、響ちゃん、ごめんっ」



その目からは悲しい(しずく)がこぼれ落ちる。



私は。

怒っていいのか。

悲しんでいいのか。

よくわからない気持ちだった。



「……責めないよな?響ちゃんはオレ達を置いて、星無市から逃げたんだもん。おあいこだよな?」
と、仲谷くんが怖い顔をする。



「……」



私は何も言えずに、うつむいた。

それを見ていた岡本くんが、
「もうやめようぜ」
と言って、こう続けた。



「みんな、怖かった。でもさ、誰よりも怖い思いをしているのは、勇気くんじゃん」