「あ、あたし、転校してきてて……」

「あれ、そうなの? あそこにいるのは関 華乃さまっていう、学校の有名人だよ。高嶺の花って感じ。そのとなりにいるのは、穐中 昏さまっていう、人なの。クール系女嫌いプリンスって呼ばれてるの」



……神格化されている……。

高嶺の花っていうほどでも、ないんだけどな。

というか、穐中君も、すごい人だって言われてる。

ますます、私と接点がないっ……。

嫌われる理由がやっぱり、分からない。


同じクラスになったのも今年だし、これは初日、しかも初対面だし。


わざわざ私の席に来てそう言った彼が、少し離れた自分の席に着くのを見つめながら、そんなことを考えていた。









「…………気持ち、悪い…」



気持ち悪い。

何が? 私が、だよね、そこは。

どうして?

……う~ん。本当によく、わからない。

愛想よくしてみようと思って、くちびるのはしを持ち上げる。



「……えっ! あの華乃さまが微笑んでる!」

「激レアじゃんっ、うわ、天使! もはや神!」

「ビジュアル崩壊レベルだって…!」

「もう国を傾けられる気がする」



結構ひきつった笑い方になってしまった気がする。

私はゆっくりと微笑みを消し、いつもの無表情に戻った。

神格化がされすぎて、みんなの話がもう、ちょっと、信じられないっ…と、思う…。