「あ、あたし、転校してきてて……」
「あれ、そうなの? あそこにいるのは関 華乃さまっていう、学校の有名人だよ。高嶺の花って感じ。そのとなりにいるのは、穐中 昏さまっていう、人なの。クール系女嫌いプリンスって呼ばれてるの」
……神格化されている……。
高嶺の花っていうほどでも、ないんだけどな。
というか、穐中君も、すごい人だって言われてる。
ますます、私と接点がないっ……。
嫌われる理由がやっぱり、分からない。
同じクラスになったのも今年だし、これは初日、しかも初対面だし。
わざわざ私の席に来てそう言った彼が、少し離れた自分の席に着くのを見つめながら、そんなことを考えていた。
*
⿻
*
「…………気持ち、悪い…」
気持ち悪い。
何が? 私が、だよね、そこは。
どうして?
……う~ん。本当によく、わからない。
愛想よくしてみようと思って、くちびるのはしを持ち上げる。
「……えっ! あの華乃さまが微笑んでる!」
「激レアじゃんっ、うわ、天使! もはや神!」
「ビジュアル崩壊レベルだって…!」
「もう国を傾けられる気がする」
結構ひきつった笑い方になってしまった気がする。
私はゆっくりと微笑みを消し、いつもの無表情に戻った。
神格化がされすぎて、みんなの話がもう、ちょっと、信じられないっ…と、思う…。