真夏に咲いた奇跡の恋花火

乃木くんは行くかどうかはわからないけど……できれば来ないでほしい。



「家の手伝いがあるから、ちょっと難しいかも」



だからごめんね。

そう、最初は断るつもりだった。


だけど、私が寂しい思いをしないようにと気遣ってくれた友の優しさを、どうしても無下にできなくて。



「でも、短時間なら大丈夫かもしれないから相談してみるね」







「失礼しました」



日誌を先生に渡して職員室を後にした。

ドアを開けるやいなや、むわっとしたぬるい空気が肌に触れる。


梅雨が明けてから一気に蒸し暑くなったなぁ。これじゃ家に着く頃には汗だくになりそう。



「あっ」



シャツをパタパタさせながら昇降口へ向かうと、ちょうど靴を履き替えている最中の乃木くんに出くわした。

うっかり出てしまった声が耳に届いていたようで、色素の薄い瞳と視線がぶつかる。



皆吉(みなよし)さん、お疲れー」

「お疲れ、さま」