真夏に咲いた奇跡の恋花火

いじける姿を微笑ましく見ていたら、わぁっと歓声が上がった。

顔を正面に向けると──少しいびつな形をしたハートの花火が1輪。



「皆吉さん、好きです。付き合ってください」

「え、ちょっ、今⁉ 早くない⁉」

「鉄は熱いうちに打てって言うじゃん。ほら、あの2人も」



不意打ちの告白に戸惑いつつ、彼が指差す先をたどる。


私達の斜め下で花火を観賞する千葉さんと手島くん。

何を話しているかは聞こえないけど、両者とも笑顔を浮かべていて。

そのすぐ近くにいるゆまと山谷さんも、幸せオーラ全開の2人を見てキャッキャと興奮している。



「お返事、聞かせてくれませんか?」



視線をクラスメイト達から隣の彼に移した。


優しくも奥に熱を秘めた眼差し。

もう既に知ってるくせに。そう思いながらも。



「……私も、乃木くんが好き」



目を合わせてゆっくり言葉を紡ぐと、端正な顔がふにゃっとほころんだ。


見た目も性格も境遇も正反対。共通項は好物以外ほぼゼロ。

だけど、案外似た者同士だったりして。



「また来年も、一緒に観ようね」

「うん」



一足早く約束を交わし、夜空に咲き続ける大輪の花火を目に焼きつけた。



END