真夏に咲いた奇跡の恋花火

「つれないなー。たこ焼きとか焼きそばとか食べたくねーの?」

「……食べたくないわけじゃないけど」

「じゃあ行こうよ!」

「彼女と行けばいいじゃん」

「いないから誘ってるんだよ! なぁ頼む! 俺来月は部活三昧だから遊べるの今月しかねーんだよぉ」



肩を揺すって駄々をこねる手島くん。

そんな彼を、千葉さんはドン引きした顔、山谷さんは苦笑いで眺めている。


日誌を閉じて机の中にしまう。


マドンナ2人はともかく、手島くんも行く予定なのか。

街中で会う分には全然構わないけど、夏祭りではあまり会いたくないなぁ……。



「おーい、誰か開けてー」

「はいはーい」



スクールバッグから英単語帳を取り出すと、山谷さんが席を立ってドアに走っていった。



「あ、ゆま! おかえり! 盛りだくさんだね〜」

「えへへ。新発売のやつ全部買っちゃった」



大量のパンを胸に抱えてにやける、ボブヘアの美少女。

彼女は仁田(にった) 由舞。私の友人で、山谷さんとは小学校時代の親友らしい。