真夏に咲いた奇跡の恋花火

ほら、早く行かなきゃ。先生が待ってる。

そう頭の中で急かすけれど、意識は完全に2人の会話に持っていかれていて。



「実は、1年の時のクラスメイトが、先週乃木くんに告白したそうなの。だけど……『誰とも付き合う気はない』って振られたんだって」



コツッとローファーの音が鳴った。
覗いてみると、彼女と乃木くんの距離が縮まっている。



「不思議だよね。中学の頃からずっと同じ理由だったのに」

「知ってるんですか?」

「友達の妹が乃木くんと同級生でね。教えてもらったの。みやびちゃんって子なんだけど」



その瞬間、全身が金縛りに遭ったように固まった。


松ノ内(まつのうち) 雅さん。

私と乃木くんのクラスメイトで、成績学年首位の美人優等生。生徒会長も務めていたため、校内では才色兼備だと謳われていた。

そして──。



「3年間一緒だったのに情け容赦もなかったらしいね。卒業式の後、ショックで丸3日寝込んだって言ってたよ」