真夏に咲いた奇跡の恋花火

「もし良かったら……私と、付き合ってくれませんか?」



沈黙を挟んだのち、敬語と上目遣いで手を差し出した。


通学中に助けてもらったのをきっかけに恋に落ちる。

いかにも少女漫画っぽい展開だけど、乃木くんの容姿なら充分起こりうる。


こんな美少女に告白されたら、多分ほとんどの人はその場でオッケーするか、まずはお友達からと返すのだろう。

けれど……。



「ごめんなさい」



乃木くんは迷うことなく、直角なお辞儀で断った。



「どうしても、ダメ?」

「はい」

「お試しでも?」

「はい」



差し出した手がゆっくりと下がる。


一貫した短い返事。
初めて告白現場に遭遇した中1の頃から一切変わっていなかった。

この様子だと、恐らく理由は──。



「僕、好きな人がいるんです」