真夏に咲いた奇跡の恋花火

「それで、俺らも行こうかって話なんだけど」

「ちょっと、勝手に進めないでよ。着いてきていいなんて一言も言ってないんですけど?」

「こっちだって一緒に行くとは一言も言ってませんが? どう? 空いてる?」

「空いてはいるけど……」



気だるそうな声色。背中しか見えていないが、どんな顔を浮かべているか大体予想がつく。



「歩くの面倒くさいからいいや」

「えええー! そこが醍醐味なのに! 浴衣美女と花火を食べ歩きしながら見られるんだぜ⁉」

「興味ない。見たいなら1人で行けば」



冷たく突き放すと再び机に突っ伏してしまった。


彼女達と同様、容姿端麗で有名な乃木くん。実は、中学時代からのクラスメイト。

だけど……この通り、かなりの面倒くさがり屋。


テスト期間以外は毎日置き勉。

学校も、自転車で通える距離に住んでいるのに、通学手段はバスと親の車。


省エネ思考なのか、とにかく無駄な力を使いたくないみたいで。
『学校がこっちに来てほしい』と、友達の前で爆弾発言したことも。