真夏に咲いた奇跡の恋花火

北館へ続く渡り廊下を歩きながら、記入漏れがないか入念に確認していたその時。



「お食事中のところ、邪魔してごめんね」



中庭のほうから女子の声が聞こえた。

ふと目を向けるも、慌てて近くの木に身を隠した。



「時間、大丈夫?」

「はい。この時間のバスはもう行ってしまいましたから」



十数分前の都丸先生と同様にそっと顔だけを出す。


彫刻のように美しい横顔、光り輝くミルクティーベージュの髪。


なんでまだいるの⁉ 昇降口前で別れたはずじゃ……。

お食事中ってことは、小腹が空いたから食堂か購買にでも寄ってたのかな。


というより、この状況はもしや……。



「私、バスの中で助けてもらった時から、ずっと乃木くんのことが気になってて……」



やっぱり……。

赤らんだ顔で話を切り出した彼女を観察する。


青いリボン……2年生か。可愛い先輩だなぁ。

おめめパッチリで、小顔で、華奢で。今どきのアイドルみたいな可愛らしい雰囲気。

女の子が羨む要素を兼ね揃えている。