真夏に咲いた奇跡の恋花火

頭に浮かんだ人物に思いを馳せる。


乃木くんとは出席番号も近く、進級したては毎回同じ班で、3年生の時は隣の席でもあった。

だけど、特別仲が良かったわけではなく、会話はグループワークの時だけ。自分から話しかけたことはほとんどなかった。

一対一で話したのは、調理実習の時だったかな。


当時から無気力全開で、時折極端な発言をしてはみんなを驚かせていたけれど、媚びたり過度にへりくだることはなくて。

告白されていた時も、曖昧な態度や答えで濁さず、自分の気持ちをハッキリ伝えていた。


穏やかで、誠実で、堂々としていて。


見目麗しい容姿に心奪われたのも嘘じゃないけど、外見以上に中身に惚れたというか。

単に好きというより、尊敬や憧れが混じっているかんじ、かな。



「同い年の王子様に片想い中の黒髪コンビ……いいですねぇ、ゆまさん」

「ええ。青春満喫してますねぇ」



すると、突然背後で声が聞こえ、揃って肩を揺らした。