真夏に咲いた奇跡の恋花火

加速していた胸の鼓動が落ち着きを取り戻していく。

良かった。追及されなくて。



「いいなー。うちの姉ちゃんと大違い」

「乃木くんのところはお姉さんなんだ。あまり優しくないの?」

「うん。ちょっと強引でさ。あと、めちゃくちゃいびきがうるさくって。酷い時は口開けて寝てるんだよ。クカーって」



愚痴をこぼすと、いびきと寝顔を再現し始めた。

半開きどころか歯が見えていて、余裕で指が入りそうなくらい。


口の中乾燥しそう。のど痛くならないのかな。
まぁ、大げさにやってるだけかもしれな……。



「……あの、乃木くん」

「ん? 何?」

「見間違え、だったらごめんね。……歯に、何か付いてない?」



距離が近いがゆえ、歯が白いがゆえに目についてしまった。

綺麗に並んだ上部の歯。その隙間に赤色の食べかすが挟まっている。



「えっ、うそっ。どこ?」

「上。犬歯のとこ」