彼がだれからそれをきいたのか?

 愛するアポロニアからきいたに違いない。

「常識的なことさえ知っていれば問題はないはずです。皇太子妃に歴史や経済や政治の助言を受けるほど、おれは無能ではありませんので」
「し、しかし、殿下」
「シュナイト侯爵夫人、皇帝もおれと同意見です。しきたりや伝統を守ることは大切かもしれません。しかし、いま生きている者が主役です。そういった古き良き時代に縛られるのではなく、もっと柔軟にいきましょう」

 コルネリウスは、シュナイト侯爵夫人になにも言わせなかった。

「最初から、おれがはっきりすればよかったのです。そうすれば、これだけのレディや関係者たちをふりまわさずにすんだのに……」

 彼は、広間内にいるすべての人たちを順番に見ていった。

 アポロニアのときだけ、彼の目が長くとどまったのを見逃さない。