カサンドラの父親であるヴァレンシュタイは宰相である。というよりかは、ヴァレンシュタイ公爵家じたいが、宰相の地位に就く家系である。

 この皇太子妃候補選ぶこの一連のイベントも、結局はカサンドラが堂々と皇太子妃になる為のお膳立てにすぎない。わたしも含め、彼女以外のメンバーはただの引き立て役なのである。

 いかにカサンドラが皇太子妃にふさわしいレディであるかを強調する為の。

 これは、古より伝わるしきたりをうまく利用したまさしくカサンドラの、というよりかはヴァレンシュタイン公爵家の為の一大イベント。

 こんなくだらないことに帝国民からしぼりとった税金を使うなどムダでしかない。

 だからこそ、皇太子本人が声を上げるべきなのである。

 コルネリウス本人が。

「あの、先生」

 こんなくだらない授業を受けるくらいなら、森を探検した方がずっと有意義だわ。

 というわけで、悪女っぷりを発揮することにした。

 危ない思想の持ち主らしい先生は、説明の邪魔をされて気分を害した。

 おもいっきりにらまれてしまった。

 だから、全力でにらみ返してやった。

 すると、彼はうしろへよろめいた。

 フフン。わたしとにらみ合いで勝てると思う?

 ちょっとだけ気分がよくなった。