「じゃあそろそろ行くわ!」


車に荷物を乗せ終えた兄貴が一人暮らしの自宅に帰る日。


「じゃあ母さん父さん、また来るから!」

「うん、仕事がんばってね」

「碧斗も…またな」

「うん、…また」


昨日の夜、ごめんって謝ったら相変わらずケラケラ笑って気にすんなって言われた。我が兄ながら、全然読めなくてやっぱに何を話したらいいかわからなくなった。

元々の性格が合わないんだ、きっと。


「じゃあ、あさひも」

「うん」


最後だからとあさひも来ていた。


「そうだ、あさひにこれ。プレゼント、偶然見付けたから」

「え、何…?」


可愛くラッピングされた小袋を手渡した。気になってのぞき込むように隣であさひが開けるのを見ていた。


「あ…!これ…っ、指輪…!」


すっげぇカッコいい光る指輪だ!!!

ダイヤモンドみたいな形をした、スイッチをオンにするとピカピカとこれでもかっていうほど光る指輪だった。


「中学生で欲しがるなんてあさひぐらいで、恥ずかしかったわ~!」


…これか、あさひが昔欲しがった指輪ってやつは。

声には出さなかったけど、テンション上げてしまった。

よかった、何も言わなくて。危ねぇ。


「拓海くんそれですっごい私のこと笑ったよね!そっから拓海くんのこと嫌いになった!」

「なんだよ、元々好きでもなかっただろ?」

「…嫌いではないけど」

「正直だな!…あさひも碧斗も正直すぎるだろ」


またケラケラと笑っていた。なんだろ、もう何がおもしろいのかよくわからんな。

でも、あさひは兄貴のこと…心配するようなあれでもなかった気がする。

兄貴は知らないけど、あさひが好きじゃないならそれでいいや。

本物の指輪はいつかオレがプレゼントするんだから。

ばいばいとみんなで手を振った。手を振りながら、隣に並んだあさひに呼び掛ける。


「あさひ」

「ん?」

「俺が大人になるまで待っててね」

「え?うん」