「……星野さん、墨(すみ)すれました?」 「はい、できましたっ」 あれから十分後、私は稽古室に通された。なぜか高田先輩はお休みらしい。 「じゃあ、墨を置いてね」 墨を置けばすぐに手記録紙(てぎろくし)を渡される。 この手記録紙とは組香の時に用いるもので答えを書く紙だ。大きさは、ハガキ大の大きさのものが横位置で縦(たて)に四つに折ってあってさらに頭の部分が折ってあり、表には自分の名前を書き、中に答えを記すものだ。