「そっか、ならいいんだよ。星野さんが何か悩んでたら話聞いてあげたいって思ってるんだ。だからなんでも言って」

「ありがと、佐山くん」

「……そうだ、星野さん。今日、稽古が終わったら話がしたいから残ってくれる?」

「話?」

「うん、少しの時間だけほしいんだ」


 そう言って佐山くんは立ち上がり、どこかへ行ってしまった。

 それだけの普通の会話のはずなのに、私は言葉を繋げるだけでドキドキして彼の足音が遠くになるまで心臓が鳴り止まなかった。