「――では、香炉の持ち方は覚えてる?」

「うん、多分……」


 私は教えてもらった通り、左手の上に水平に乗せて右手で香炉を(おお)る。


「そうそう、できてる。じゃあ、聞き方は?」

「えっと、まずは……親指と人差し指の間から聞くんだよね?」

「うん、次は?」

「香炉は、香元から右回りで回ってくるから聞口が自分の手前に来るように回してから聞く?」


 私は、香炉に見立てた湯呑みを記憶を引っ張り出して自信がないがしてみる。自信がないからか疑問系になっちゃう……


「合ってるから自信持ってやってみてよ」

「う、うん」

「星野さん、今日は先輩と俺用事があるからさ早く終わってもいい?」

「え? うん、いいけど……」


 早く終わるなんて初めてだなって思いながらも、二人一緒に用事って珍しいななんて思ったけど……まだ二人と出会って少ししか経ってないんだし知らなくて当然か。


「ありがと、星野ちゃん」



 そうして、片付けをして急に部活が終わり帰ることになった。

 まだ吹奏楽の音が聞こえているし外では運動部の子達が走っていてそんな中を歩いているのはなんだか不思議な気分だった。